弁護士法違反で税賠?
今回は、非弁活動による弁護士法違反を理由として税理士損害賠償事件となった東京地裁令和4年1月28日判決を解説します。
(事案)
相続に関する遺産分割協議に関し、相続人である原告らは、税理士である被告が、相続税申告業務について依頼していないのに、遺産分割協議に介入、主導したことが、弁護士法72条違反であるとして、支払い済みの報酬、弁護士費用、慰謝料などを請求した。
(原告の主張)
1 ①相続人及び相続財産の確認、確定、②相続財産の分割協議の取りまとめ、③預貯金の引出しに至るまで銀行と協議及び手続をすること、④相続税の申告等の委任状を求めた行為
2 原告らがブラジル在住の相続人に提示する遺産分割方針の案文を作成した行為
原告らに対し、ブラジル在住の相続人の意向を確認するためブラジルに渡航するよう勧奨した行為
3 遺産である預金に関し、代理口座の開設、被相続人名義の口座の解約、被告Y1名義への預入れ
4 遺産に係る分配案の作成をした行為
5 報酬を受領した行為
(判決)
・各行為は、いずれも当事者間に何らかの法的紛議が生じるおそれはない。
・各行為は、相続税の申告を将来行うことを前提としたものとみられる。
・相続税の税務相談を受けた税理士は、相続人と相続財産を確定し、その分割方法の協議が必要である旨を助言することになる。
・そうすると、各本件行為が税理士の職域を超えたものとは評価し難い。
・相続人数等によっては、相続税の申告が不要となる余地があるが、仮にそうであるとしても、弁護士法72条に違反するとはいえない。
→ 税理士勝訴。
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以上です。
税理士が、相続人らの遺産分割協議に関与することがあると思います。
この場合、どこからが弁護士法違反になるのか、不安もあるのではないでしょうか。
例えば、兄と弟の双方が遺産であるマンションを取得したがって対立した場合に、税理士が兄の側に立って弟を説得したら、どうなるでしょうか。
この場合には、弁護士法違反となる可能性が高いです。
最高裁平成22年7月20日判決は、「交渉において解決しなければならない法的紛議」が不可避な案件に介入した事案(立ち退きの事案です)で弁護士法違反を認定しています。
したがって、遺産分割協議において、意見の対立が発生した場合には、税理士としては、それ以上は深入りしない方が無難です。
「税理士を守る会」は、こちら
https://myhoumu.jp/zeiprotect/new/